2018/09/11
矯正治療を前向きに考えている患者さんや親御さんからの問い合わせで多いのは、
治療方法、治療期間、費用、
そして痛みに関することです。
こういった質問に関しては実際の不正咬合の状態を確認したうえでの
判断になってくるので、電話だけで正確にお答えすることはできませんが、
大体のことや、一般的なことはお答えすることが出来ます。
今回はそんな疑問の中の「矯正治療中の痛み」
に関して書いていきたいと思います。
■そもそもなぜ痛みが発生する?
不正咬合を治していくために、
歯にブラケットと呼ばれる矯正装置を付け、
そのブラケットに歯列の形をした形状記憶合金のワイヤーをセットします。
歯列の形をしたワイヤーは、形状記憶合金なので、
綺麗な歯列の元の形に戻ろうとします。
ワイヤーに引っ張られた(あるいは押された)歯は、
歯茎の中の歯根と呼ばれる部分にも力が加わり、
少しずつ骨の吸収と再生を繰り返して動いていきます。
この歯を動かすために加わった力が、
歯周組織において違和感や圧迫感、痛みを与えることがあります。
■痛みに対する対策
最も重要なのが、患者さん毎にしっかりと調整できるか、という点です。
患者さんの不正咬合の正確な検査と診断、
それをもとにした治療計画を立て治療を開始していくわけですが、
どれだけ正確に検査、診断しても、計画通りに動かないことも起きます。
そうなったときに臨機応変に対応できるか、ということが重要です。
歯を動かしていくために使用するワイヤーの太さ、
ブラケットとワイヤーを固定する際の力加減、
顎間ゴムなどの強さ選択も矯正医の経験が必要になります。
無理に強い力で動かそうとすると、痛みにつながるだけでなく、
歯根吸収という現象になり、歯茎に埋まった歯根が細くなって、
最悪の場合歯が抜けてしまうこともあります。
矯正材料の進化も痛みを助けます。
一昔前は歯を動かすワイヤーがステンレスでできていて、
今と違い太く硬いワイヤーのみでした。
これによりとても大きな力が歯と歯茎に伝わり、
痛みがしばらく続いてしまうといことが普通でした。
現在はワイヤーの材質が柔らかいものになり、太さもかなり細くなっています。
特に叢生(デコボコ、乱ぐい歯)や捻転(ローテーション、ねじれ)
などを解く際には弱い力のワイヤーが痛みの軽減に大きく影響しています。
また、セルフライゲーションと呼ばれるブラケットとワイヤーを
固定しない矯正材料も出てきていて、
痛みに関してあまりストレスを感じない、
あるいはすぐに痛みがなくなるという患者さんがほとんどというのが現状です。
不正咬合の状態、原因は患者さん毎に全く違います。
また痛みの感じ方も人それぞれです。
これだから大丈夫ですという確実なことはありませんが、
どのような状態の不正咬合であっても、
矯正歯科医としてしっかりと状況を把握し、
臨機応変に対応できるのかということが
やはり重要なポイントだと思っています。
2018/09/01
ガミースマイルという言葉をご存知でしょうか?
ガミースマイルとは、笑った際に上の歯茎が見えすぎてしまう状態のことを指します。
見た目に大きく影響する部分で、それが好きな人もいる反面、
やはり見えすぎるのは嫌だということで相談に来られる人も多々いらっしゃいます。
このガミースマイルの原因はほかの不正咬合と同様に、いくつかあります。
症状によって矯正治療で治していくことも可能なので、見ていきましょう。
■骨格が原因
上顎の骨が過度に成長している、あるいは前に出ていることで
ガミースマイルになっているケースが最も多い原因の一つです。
■唇が原因
本人では気づきづらいところですが、唇の筋肉が過度に発達していることで
ガミースマイルになる人もいます。
また、上唇が薄い(短い)、あるいは上唇と歯茎の間のスペース(口腔前庭部)が広いことが原因のケースもあります。
■歯茎が原因
歯茎が発達しすぎたことにより、
歯に覆いかぶさりガミースマイルになっていることもあります。
これは歯があまり歯茎から出ていないということで気づきやすいものかもしれません。
■歯の生える位置が原因
上顎の前歯が下方(咬合面)寄りに生えていることで
ガミースマイルになっているケースもあります。
このようにいくつか原因が考えられ、
また、複合的に原因が重なることも多々あります。
ガミースマイルは、状況により外科手術を行うことで、
歯茎を目立たなくすることができる反面、
大掛かりな骨切り術で治療した場合、人によって
1,2か月腫れが引かないということもあります。
歯の生え方が原因でのガミースマイルは、
矯正治療における根本解決が大切かと考えています。
状態と原因によってアプローチは変わってきますが、
基本的に矯正治療は「本来あるべき場所に歯を並べていく」ので、
治療後の健康も含めて永く綺麗な状態を保つことにつながっていきます。
筋肉の原因が混合する場合は、
筋肉のトレーニングと合わせて治療していくことで、
より後戻りの少ない治療結果となるでしょう。
どちらにしても難しい問題なので、
気になる場合はお気軽に相談頂ければと思います。
2018/08/11
猛暑が続き暑い日が続きますが皆さま体調はいかがでしょうか。
さて8月12日(日)~16日(木)まで
夏季休暇とさせて頂きます。
装置の不具合等、緊急連絡先については
横浜市歯科保険医療センター(休日急患診療所):045-201-7737までご連絡お願いいたします。
尚、上記センターは、装置の装着などは行っておらず、応急処置のみとなります。
当院は8月17日より通常診療いたしますので、
装置の装着等は、休診明けに当院にて行います。
ご不便おかけし申し訳ございませんが何卒宜しくお願い致します。
ひらの矯正歯科
院長 平野 正芳
2018/08/01
今回は、矯正治療中の口臭に関して書いていきたいと思います。
口臭に関しては、自分自身でなかなか気づきづらいということもあり、
矯正治療中に限らず誰もが気にすることかもしれません。
矯正治療中における口臭の原因と対処法をみていきましょう。
■乾燥が原因の口臭と対策
口臭の一番の原因は口腔内の乾燥です。
口の中が乾燥すると、本来、唾液にある自浄効果が下がり、
虫歯菌をはじめ、細菌が増殖します。
矯正治療中にブラケットが歯に装着されることで、
口をしっかりと閉じづらくなり、口腔内が乾燥し、
口臭につながるというケースがあります。
乾燥による口臭は、マスクをすることである程度防ぐことができます。
最近では水分を含んだ保湿用マスクも売られているので、お勧めです。
また唇を閉じるのが非常に難しい段階では
閉口テープという唇を閉じるためのテープもあります。
寝るときに付けることで乾燥を防ぎます。
ひらの矯正歯科でも取り扱っております。
また唾液腺マッサージという方法もあります。
耳の下のあたりの耳下腺や、舌下腺などのツボをマッサージして、
唾液分泌を促す方法もあります。
■磨き残しが原因の口臭と対策
ブラケットやワイヤーと歯の間に磨き残しが生じてしまい、
口臭の原因になることもあります。
磨き残しは虫歯菌などの増殖につながり、
乾燥と同様口臭へとつながっていきます。
これに関しては、やはり日々のしっかりとしたブラッシングです。
専用の歯ブラシを使って、ブラケット周り、
ワイヤーと歯の間を念入りに磨くことが大切です。
矯正歯科医院ではたいていブラッシング指導を行っているので、
こまめに歯磨きを行ってください。
このように見てみると、矯正治療中だからということだけでなく、
通常の時も大切な話だということが分かります。
確かにブラケットを装着することで口臭につながることもありますが、
日々のケアは健康な歯を保つためにも必要なポイントです。
また、口臭を改善するために矯正治療を受けるということも
最後にお伝えしておきます。
オープンバイト(開口)や上顎前突(出っ歯)など、
口をそもそも閉じにくい不正咬合の方もいらっしゃいます。
矯正治療を受けることで、
口臭の根本原因の口腔内乾燥を防ぐことにつながります。
口腔内が乾燥している状態は上に書いた通り細菌の増殖につながります。
これは虫歯から歯周病へとつながるリスクをはらんでいます。
しっかりと状態を把握し、健康な歯を維持していっていただければと思います。
2018/07/03
矯正治療を行うにあたり、親知らずを抜歯する、しないという話が出てきます。
以前親知らずに関してここでも書いたことがありますが、
もう一度親知らずの役割、抜歯の必要性について整理していきたいと思います。
親知らずは、前から数えて8番目の歯で、
歯の中でも最後の方に生えてくる歯です。
智歯とも呼びます。
近年、顎のサイズが小さくなる傾向があり、
親知らずがそもそも生えてこない、
あるいは、変なところに飛び出して生えてきてしまう
という方が多くなってきています。
ですが、だからと言ってすぐに抜歯をする必要があるかというと、
それは話が別になってきます。
親知らずの抜歯が必要になるケースと、
残すケースについて考えていきましょう。
■親知らずの抜歯が必要になるケース
親知らずが斜めに生えてきたり、
隣の歯(第二大臼歯)の方向に生えてくるケースがあります。
これは放っておくと第二大臼歯に力が加わり、不正咬合の原因になってしまいます。
不正咬合の原因、特に叢生(デコボコ、乱ぐい歯、八重歯)や、
捻転(ローテーション)などの原因として多いのが、
歯列を確保するだけのスペースがないことが挙げられます。
歯を並べるスペースを確保するためには、
ディスキング(歯の側面を少しだけ削る)、抜歯する、
または奥歯を遠心(奥方向)移動させるなどの方法があります。
奥歯を奥に移動させる際に親知らずが妨げになっている場合、
抜歯を必要とすることがあります。
上下の親知らずがまっすぐ正常に生えていないことで、
噛み合わせに問題が生じているケースがあります。
これは場合によっては顎関節症につながることも考えられるので、
抜歯したほうが良いケースがあります。
■親知らずの抜歯を必要としないケース
これは説明するまでもないかもしれませんが、
正常に噛み合うように生えてきていれば、
わざわざ抜歯する必要はありません。
親知らずの手前側の歯である第二大臼歯が、
重度の虫歯などの場合、第二大臼歯を抜歯して、
そのスペースに親知らずを持ってくるというケースがあります。
また矯正治療において、他の歯を動かすための固定源(アンカー)として
親知らずを使用することもあります。
抜歯、非抜歯に関しては、親知らずに限らず難しい問題です。
患者さん一人ひとりの不正咬合の状態も違い、
もちろん親知らずの状態も違うためです。
そのため、いくつかの選択肢を理解して、
しっかりと検査、診断したうえで判断していくしか方法はありません。
また、親知らずは特に歯茎の中に埋まっているというケースも多々あります。
そのため、患者さん本人で判断することは到底できない場合がほとんどです。
気になる方は、抜かないケースもあるということを知ったうえで、
しっかりとした検査をされてみてはいかがでしょうか。