2016/08/27
以前に成人の矯正治療患者さんが増えてきているということを書きましたが、
成人の患者さんの治療において気を付けていかなければならないことがあります。
今日はそんな中から特に補綴物(ほてつぶつ)に関して書いていこうと思います。
補綴物とは、銀歯や差し歯など歯の替わりになるものの総称です。
年齢が上がってくると、口腔内の補綴物が増えている可能性があります。
虫歯は歯を削り、削った部分に何かしらの補綴物を入れることで治療します。
比較的軽度の治療の場合はレジンと呼ばれる一種のプラスチック、
削る量がやや増えてくると金属やセラミックの詰め物を入れることになります。
金属のものは所謂「銀歯」で、セラミックのものを「インレー」とも呼びます。
更に重度の治療が必要になった場合は、
神経の処置をした後にクラウンと呼ばれる被せものを被せることになります。
天然歯は一旦削ると元に戻ることはないため、
年齢が上がるとともに、治療後の補綴物の数は多くなり続けます。
もちろん全く虫歯にならず、補綴物ゼロが理想ですが。
そこで生まれる疑問が、補綴物があっても矯正治療が出来るのか?
ということではないでしょうか。
先に答えると、治療できます。
ただし少しだけ難易度が上がってきます。
一つはブラケット(矯正装置)が天然歯と比べて
補綴物に接着しにくいということがあります。
専用のセメントもありますが、やはり脱離のリスクが上がってしまいます。
通常補綴物の表面を少しざらざらに処理し、矯正装置を接着します。
治療が終わってから表面を滑らかに処理するという工程になります。
ちなみに見えない舌側矯正(裏側矯正、リンガル)の場合、
この補綴物を削るのが当然裏側になりますので、
表側を傷つけることなくできる点でもメリットになります。
二つ目はマージンラインについてです。
マージンラインとは歯茎のラインの部分で、
歯を動かすことで補綴物と歯茎の間に隙間が出来てしまうことがあります。
治療上仕方のない部分ではありますが、
隙間に食べ物の残りが溜まりやすかったり、
見た目にも影響があるので、矯正治療後に改めて
補綴物を作り直すのが良いかもしれません。
補綴物に限らずインプラントを入れている場合や欠損歯がある場合など、
年齢が上がるとそれぞれ口腔内の状況が変わってきていると思います。
それぞれの状態に合わせて検査、診断したうえで
しっかりとした矯正治療計画を一緒に考えていければと思っています。
2016/08/13
梅雨が明けてからの気温の高さに驚かされます。
患者さんとの会話の中で去年はこんなに暑くなかったような….と
いうこと良く耳にします。
みなさまも暑い日が続きますので、お体に十分にご留意下さい。
先日の「山の日」が私の誕生日でした。
スタッフから誕生日のお祝いを頂きました!
明日からお休みなのでおいしく頂きます。
いつもクリニックを、そして私を支えてくれているスタッフに感謝です。
どんなに忙しい時でも患者さんのことを第一に考えて行動してくれている
スタッフに感謝です。
「ありがとう」
言葉にすると短いですが、
私のその思いは5文字で語れないくらい大きなものです。
いつもありがとう。
さて明日から18日(木)まで夏季休診となります。
ご不便をお掛けいたしましが
よろしくお願い致します。
装置の不具合など緊急な場合
横浜市歯科保険医療センター(休日急患診療所)
045-201-7737までご連絡お願い致します。
※装置の装着は行ってくれないため応急処置のみとなります。
当院は、19日(金)から通常どおり診療いたします。
よろしくお願い致します。
ひらの矯正歯科 院長 平野 正芳
2016/08/09
今回は金属アレルギーに関してお話していこうと思います。
歯を動かす矯正治療は様々な方法がありますが、
基本的には歯に弱い力を加えて時間をかけて動かしていくことは共通しています。
多くの場合、ブラケットと呼ばれる矯正装置を歯に装着し、
そのブラケットに金属のワイヤーを通し、
金属のワイヤーがもとの形状に戻る力を利用して歯を動かしていきます。
このブラケットは様々な材質があり、
一昔前はほとんどが金属でした。
そこで金属アレルギーの方の場合、
矯正治療が受けられないということもありました。
先にお伝えしておくと、現在では金属の材質も様々あったり、
セラミックのものもあるため、金属アレルギーの方も矯正治療を受けることが出来ます。
ではそもそも金属アレルギーはどういったものかを見ていってみましょう。
金属アレルギーの場合、食べ物のアレルギーとは違い、
アレルゲンに触れる機会が少ないため、
ご自身が金属アレルギーということに気づいていないということも多々あります。
金属アレルギーは、何らかの原因で金属イオンが、
皮膚や粘膜を通して血液に入り、タンパク質と結合します。
このたんぱく質と結合したものは本来身体になかった物質で、
それを排除しようと過剰に免疫細胞が活動し、アレルギー反応としてでます。
歯科における金属アレルギーの最も多い物質は、
ニッケル、クロム、コバルトなどで、
矯正材料においてもこのニッケルなどが多々使用されてきました。
ではアレルギー患者さんの場合の矯正治療はどういったアプローチがあるかを
ご紹介します。
①セラミックブラケット
金属ではない材質、セラミックのブラケットを選択できます。セラミックは陶器のもの、中には人工サファイアなどもあります。見た目にも透明や白いものが多く、審美的に選択される方も多くいらっしゃいます。
②マウスピース矯正
ブラケットではなくマウスピース矯正を選ぶこともあります。矯正専門医によって意見が分かれますが、不正咬合の状態によって選択できない場合もあります。上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口、しゃくれ、反対咬合)などの重度の不正咬合の場合や、噛み合わせの改善を必要とする場合は難しくなったりします。
その他、アレルギー反応のほぼない金合金を使用しているブラケットなどを選択する矯正医もいます。
このように矯正器具に関して金属アレルギー対策はかなり進んでいます。
そして大切なのは自分が何の金属アレルギーなのかを治療前に確認するのが安全です。
例えばニッケルのアレルギーであれば、ニッケルが全く入っていない金属のワイヤーを選択することで解決出来たりします。
アレルギーに関してはとても難しい問題であるので、
しっかりと事前の確認、対応方法などを矯正治療専門医と相談したうえで、
安心して矯正治療を始めていただければと思います。
2016/07/22
東京矯正歯科学会に参加してきました。
例年、有楽町にて関東の矯正医を中心として開催されます。
今年は当院所属の認定医Dr.の発表もありました。
日本矯正歯科学会の認定医は、5年ごとの更新が必要となり
口頭試問を受けて合格して、はれて更新が可能となります。
なかなか厳しい制度ですが、厳しいからこそ価値のある資格だと
思います。
学会終了後は、大学矯正科医局時代の仲間たちと懇親会を開き
良い情報交換ができました。
11月には、日本矯正歯科学会、日本舌側矯正歯科学会があり、
今年もまだまだ忙しそうです。
2016/06/28
今回は、部分矯正について考えていこうと思います。
部分矯正というのは歯列全体を治していく治療ではなく、
気になる部分だけを綺麗に並べる歯列矯正治療のことで、
M.T.M.(Minor tooth movement)とも呼びます。
実際にブラケット(矯正装置)を装着するのは
ほとんどの場合、前歯部だけなので、
最近では、全体の矯正治療より「安価」、
「治療期間を短く治せる」ということで
部分矯正を希望される方が増えてきています。
しかし、適応症が限られる等
いくつか注意しないといけない点がありますので、
今回はそれをお伝えしていければと思います。
■部分矯正のメリット
・費用が安くなる:使用する矯正装置の数が少なく、
また治療期間も比較的短いため、治療費は全体の矯正治療より安くなります。
・治療期間が短い:重度の不正咬合ではなく、叢生など簡単な症例の場合に
部分矯正をするので、治療期間は通常の歯列矯正より短くなります。
患者さんの中には、結婚式や受験勉強、留学、
就職などの大きな生活の変化の前の限られた期間で治療を終わらせたい、
あるいは過去矯正治療を受けたことがあり、
少し後戻りしたのでまた綺麗に並べたいという方もいらっしゃいます。
多くの方が第一印象にも大きく影響を与える前歯部の叢生(デコボコ)や、
正中離開などすぐに見える部分の矯正治療を希望されています。
このように一見うれしい話ばかりのように聞こえますが、
部分矯正での治療が出来ない場合や、
部分矯正で注意すべきポイントもあります。
■部分矯正の確認すべきポイント
・奥歯の咬合関係:上下の奥歯(第一大臼歯)の咬み合せは歯列全体の軸になります。
例えば、前歯のみの部分矯正の場合
治した部分のみ良くなりますが、動かしていない奥歯の咬み合わせが
良くなるわけではありません。
そのため部分矯正をする以外の歯の状態、奥歯も含めた咬み合わせを
部分矯正だけで問題がないか治療開始前に十分に検討する必要があります。
・治療の全体の質:全体の矯正治療と比べると当然治療後の質は下がります。
動かす部位が部分的となるので動かしていない部分に関しては、自然のままとなるので
全体の咬み合わせは治りません。
結婚式などの期限が迫っている場合に部分矯正を選ばれる方は多いですが、
やはり結婚式後に全体治療として矯正治療の続きをされる方も多くいらっしゃいます。
・重度の不正咬合:これはイメージ湧くかと思いますが、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合、受け口、しゃくれ)といった重度の不正咬合がある場合はなかなか部分矯正というわけにいきません。
部分矯正はメリットもありますが、注意しなければいけない点も多くあります。
しっかりとした診断の上で判断する必要があります。
安易に「費用が安い」「治療期間が短い」ということだけで判断するのではなく、
しっかりと相談、検査、診断をしたうえで選択していただきたいと思います。