2016/06/28
今回は、部分矯正について考えていこうと思います。
部分矯正というのは歯列全体を治していく治療ではなく、
気になる部分だけを綺麗に並べる歯列矯正治療のことで、
M.T.M.(Minor tooth movement)とも呼びます。
実際にブラケット(矯正装置)を装着するのは
ほとんどの場合、前歯部だけなので、
最近では、全体の矯正治療より「安価」、
「治療期間を短く治せる」ということで
部分矯正を希望される方が増えてきています。
しかし、適応症が限られる等
いくつか注意しないといけない点がありますので、
今回はそれをお伝えしていければと思います。
■部分矯正のメリット
・費用が安くなる:使用する矯正装置の数が少なく、
また治療期間も比較的短いため、治療費は全体の矯正治療より安くなります。
・治療期間が短い:重度の不正咬合ではなく、叢生など簡単な症例の場合に
部分矯正をするので、治療期間は通常の歯列矯正より短くなります。
患者さんの中には、結婚式や受験勉強、留学、
就職などの大きな生活の変化の前の限られた期間で治療を終わらせたい、
あるいは過去矯正治療を受けたことがあり、
少し後戻りしたのでまた綺麗に並べたいという方もいらっしゃいます。
多くの方が第一印象にも大きく影響を与える前歯部の叢生(デコボコ)や、
正中離開などすぐに見える部分の矯正治療を希望されています。
このように一見うれしい話ばかりのように聞こえますが、
部分矯正での治療が出来ない場合や、
部分矯正で注意すべきポイントもあります。
■部分矯正の確認すべきポイント
・奥歯の咬合関係:上下の奥歯(第一大臼歯)の咬み合せは歯列全体の軸になります。
例えば、前歯のみの部分矯正の場合
治した部分のみ良くなりますが、動かしていない奥歯の咬み合わせが
良くなるわけではありません。
そのため部分矯正をする以外の歯の状態、奥歯も含めた咬み合わせを
部分矯正だけで問題がないか治療開始前に十分に検討する必要があります。
・治療の全体の質:全体の矯正治療と比べると当然治療後の質は下がります。
動かす部位が部分的となるので動かしていない部分に関しては、自然のままとなるので
全体の咬み合わせは治りません。
結婚式などの期限が迫っている場合に部分矯正を選ばれる方は多いですが、
やはり結婚式後に全体治療として矯正治療の続きをされる方も多くいらっしゃいます。
・重度の不正咬合:これはイメージ湧くかと思いますが、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(反対咬合、受け口、しゃくれ)といった重度の不正咬合がある場合はなかなか部分矯正というわけにいきません。
部分矯正はメリットもありますが、注意しなければいけない点も多くあります。
しっかりとした診断の上で判断する必要があります。
安易に「費用が安い」「治療期間が短い」ということだけで判断するのではなく、
しっかりと相談、検査、診断をしたうえで選択していただきたいと思います。